インターン中のセクハラ被害
厚生労働省から委託を受けた民間企業が、2020〜22年度に大学や専門学校を卒業し、就活を経験した学生1,000人を対象に調査によれば、インターン中のセクハラ被害の内容として、「性的な冗談やからかい」(38.2%)が最も多く、「食事やデートへの執拗な誘い」(35.1%)、「不必要な体への接触」(27.2%)が続いており、「性的な関係の強要」と答えた学生も19.7%だった。

また、インターンシップ以外の就活中にセクハラを経験した学生は31.9%に達しており、男子学生が34.3%、女子学生は28.8%だった。被害に遭った場面では32.8%が「リクルーターと会ったとき」、26.0%が「内々定を受けた後」を挙げた。企業説明会や採用面接時での被害はそれぞれ17%程度だった。

男女雇用機会均等法における措置義務
男女雇用機会均等法は従業員をセクハラ被害から守るため、企業に相談窓口の設置などを義務づけています。
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。(男女雇用機会均等法第11条1項)
このように、男女雇用機会均等法は従業員をセクハラ被害から守るため、企業に相談窓口の設置などを義務づけています。
しかし、就活生と企業の間に雇用関係がないことから、これまでは労働法の保護対象から外れているため、就活生へのセクハラを防止する法律はありません。つまり、学生は法律上の対象外なのです。
現実的には、男女雇用機会均等法に基づいて作成されているセクハラ防止指針に、企業が就活セクハラの防止のために必要な注意を払うよう努めることが「望ましい」との文言が記されていますが、法に根拠がなく重視されていませんでした。
男女雇用機会均等法の改正
今回の改正では、男女雇用機会均等法に就活セクハラの防止の措置義務に関する新たな条文を追加する見込みとなっています。順調に進めば措置義務の施行は2026年10月です。
また、新条文に基づく行政指導指針として、労働者に対するセクハラの措置義務と同じように下記の内容が記される予定です。
- 就活セクハラを許さない方針の明確化と周知
- 行為者の厳正処罰を就業規則などに規定
- 相談窓口の設置
- セクハラ発生時の速やかな事実確認
- 被害者への配慮と行為者への適正措置
- 再発防止 等
また、上記の内容に加え、各企業が設けるセクハラ防止方針で社員がOB・OG訪問などで学生と接触する際のルールや、行為者の謝罪と被害者の心情に応じた相談について規定することも盛り込み、指針の水準を満たさず問題が発生した場合、労働局が行政指導することになるとされています。
万が一、セクハラを受けた場合はどうすべきか。
個人で対応するのでなく、いち早く大学のキャリアセンターの相談窓口などを利用して、公式なクレームを入れてもらうべきです。
対策が遅れているとはいえ、企業側が就職セクハラを容認することはありません。これまでいくつも就活セクハラ事件は起こっていますが、実行者は厳罰に処され、企業は丁重に対応しています。しかるべきルートで訴えれば、就活生に不利になることを企業はしません。
就活生は泣き寝入りせず、勇気を持って行動することが大切です。