第一種・第二種衛生管理者試験共通・労働衛生④(腰痛予防対策・情報機器作業)

労働衛生④ 衛生管理

腰痛予防対策

職場での腰痛の要因

職場での腰痛は、休業4日以上の職業性疾病のうち6割を占める労働災害となっています。腰痛の要因は、動作要因、環境要因、個人的要因、社会的要因に分けることができます。

職場における腰痛予防対策指針

厚生労働省は、職場の腰痛対策として、「職場における腰痛予防対策指針」を策定しています。本指針では、一般的な腰痛の予防対策を示した上で、腰痛の発生が比較的多い作業における腰痛の予防対策を示しています。

一般的な腰痛の予防対策(作業管理面

  1. 腰部に負担がかかる作業の全部又は一部を自動化する。
  2. 不自然な姿勢を取らないようにする。
  3. 作業台や椅子は適切な高さに調節する。
  4. 同一姿勢を長時間取らないようにする。
  5. 適宜、休憩時間を設け、その時間には姿勢を変えるようにする 等

一般的な腰痛の予防対策(作業環境管理面)

  1. 適切な温度を保つ。
  2. 適切な照度を保つ。
  3. 十分な作業空間を確保する。
  4. 長時間にわたって振動を受ける作業を行う場合は、座席の改善・改良などにより振動の軽減を図る 等。

重量物取扱い作業

腰痛の発生が比較的多い作業として重量物の取扱い作業を挙げることができます。重量物の取扱い作業においては、下記の内容の対策を講じます。

人力による重量物の取扱い

  1. 満18歳以上の男子労働者が人力のみで取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるように努めること。
  2. 満18歳以上の女子労働者は、男性が取り扱う重量の60%位とすること。

重量物の明示

  1. 取り扱う物の重量は、できるだけ明示すること。
  2. 著しく重心の偏っている荷物は、その旨を明示すること。

作業姿勢

重量物を取り扱うときは、急激な身体の移動をなくし、前屈やひねり等の不自然な姿勢はとらず、かつ、身体の重心の移動を少なくする等できるだけ腰部に負担をかけない姿勢で行うこと。

腰部保護ベルト

必要に応じて腰部保護ベルトの使用を考えること。腰部保護ベルトについては、一律に使用させるのではなく、労働者ごとに効果を確認してから使用の適否を判断すること。

立ち作業

立ち作業も腰痛の発生が比較的多い作業のひとつです。立ち作業においては、下記の内容の対策を講じます。

  1. 長時間の連続した立位姿勢保持を避けるため、腰掛け作業等、他の作業を組み合わせる。
  2. 床面が硬い場合は、立っているだけでも腰部への衝撃が大きいので、クッション性のある作業靴やマットを利用して、衝撃を緩和する。
  3. 寒冷下では筋が緊張しやすくなるため、冬期は足もとの温度に配慮すること。

座り作業(腰掛け作業)

座り姿勢は、立位姿勢に比べて、身体全体への負担は軽いが、腰椎にかかる力学的負荷は大きいため、長時間の座り作業も注意が必要です。座り作業においては、下記の内容の対策を講じます。

  1. 座面の高さ、奥行きの寸法、背もたれの寸法と角度及び肘掛けの高さが労働者の体格等に合った椅子、又はそれらを調節できる椅子を使用させること。
  2. 椅子に深く腰を掛けて、背もたれで体幹を支え、履物の足裏全体が床に接する姿勢を基本とすること。また、必要に応じて、滑りにくい足台を使用すること。

腰痛予防対策に係る健康診断

重量物取扱い作業など腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対しては、その作業に配置する際及びその後6ヶ月以内に1回実施します。

労働衛生教育

重量物取扱い作業、同一姿勢での長時間作業、不自然な姿勢を伴う等に従事する労働者については、当該作業に配置する際及びその後必要に応じ、腰痛予防のための労働衛生教育を実施すること。

情報機器作業

情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン

パソコンやタブレット端末等の情報機器を使用して行う作業は、画面を凝視したりすることが多くなるため、目が疲れやすくなり、また、長時間同じ姿勢で作業することで、腰痛や肩こりの原因になったりします。

厚生労働省は、情報機器作業に関して、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しています。このガイドラインでは、情報機器作業に関する作業環境管理や作業管理、健康管理について基本的な考え方が示されています。

作業環境管理

作業管理とは、作業者の心身の負担を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、情報機器作業に適した作業環境管理を行うことです。

作業環境管理については、以下の内容の対策を講じます。

  1. ディスプレイを用いる場合の書類及びキーボード上の照度は300ルクス以上とする。
  2. ディスプレイ画面および書類およびキーボード面の明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくする。
  3. グレア防止のため、間接照明器具を用いる。

作業管理

作業管理とは、作業者が、心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、作業時間の管理を行うとともに、整備した情報機器、関連什器等を調整し、作業の特性や個々の作業者の特性に合った適切な作業管理を行うことです。

作業管理おける作業時間については、以下の対策を講じます。

  1. 1連続作業時間が1時間を超えないようにする。
  2. 連続作業の合間に10~15分の作業休止時間を設ける。
  3. 1連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設ける。

作業管理におけるディスプレイについては、以下の対策を講じます。

  1. おおむね 40cm以上の視距離が確保できるようにし、この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。
  2. ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。
  3. ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さすぎないように配慮し、文字高さがおおむね3mm以上とするのが望ましい。

情報機器作業に係る健康診断

情報機器作業に係る健康診断は、情報機器作業への配置前と、その後1年以内ごとの定期に行います。(一般の定期健康診断に併せて実施することも可能)。

健康診断の対象者

  • ディスプレイやキーボードを常時使用する情報機器作業を1日に4時間以上の労働者
  • 疲れたときに適宜休憩や作業姿勢の変更が困難な情報機器作業を1日に4時間以上の労働者
  • l上の2つの作業が1日に4時間未満だが、眼や肩の痛みなどの症状がある労働者