2024年の自殺者数(暫定値)が公表されました。

厚生労働省発表

2024年の自殺者数(暫定値)

2024年1年間の自殺者数の暫定値は20,268人で、統計を始めてから過去2番目に少なく、男性は前の年から1,099人減って13,763人、女性は470人減って6,505人となっています。

世界的に見ても、日本の自殺率は非常に高く、自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は主要先進7カ国の中で最も高くなっています。日本の自殺率が高いのは、島国の閉鎖的な文化が原因であるとか、悩みを抱え込みやすいという国民気質が原因であるとか言われたりしますが、その原因は明らかになっていません。

小中高生の自殺者数が過去最多

2024年の小中高生の自殺者数は527人と前年と比べて14人増加し、過去最多となっています。なお、男女別のデータがある2009年以降で初めて女子の数が男子を上回りました。児童・生徒を年代別に見ると、高校生が349人で7割近くを占めており、中学生が163人、小学生が15人となっています。

学校での問題に関連する原因としては「学業不振」が最も多く、「進路に関する悩み」、いじめ以外の「友人との不和」が続いています。

子どもの自殺が深刻になっていることにより、国は2023年6月にこどもの自殺対策緊急プランを公表しました。その強化プランの1つとして、コロナ禍を経て小中学生に1人1台行き渡ったタブレット端末の活用等により、自殺リスクの把握や適切な支援につなげるため、有償・無償で利用できるシステムやその活用方法、マニュアル等を整理・作成し、全国の教育委員会等に周知し、全国の学校での実施を目指す事が挙げられます。

また、オーストラリアで2024年12月、16歳未満の子どものSNS利用を禁止する法律が成立しました。法律成立の背景には、SNSを通じた犯罪やいじめで子どもを亡くした親たちの訴えや若者がSNSに依存してしまい、心の健康に悪い影響を及ぼすという懸念などからです。

ネットいじめ

特に近年、ネットいじめが増えています。ネットいじめには、悪口を書く、無視したり、仲間はずれにする、他の人に見られたくない写真を投稿する、掲示板などに個人情報を記入するなどがあります。

このような行為は学生であれば、学校だけではなく、家にいても休日でもいじめられることになり、精神的に追い込まれることになります。また、ネット上に個人情報や写真などがアップされた場合、それらは永久に残り、晒されることになります。

誰もがスマートフォンを持つような時代になり、いつでも簡単に情報を得ることができたり、ネットを通じて人脈などのネットワークも以前に比べて容易に広げることができるようになりました。しかし、その便利さの反面、あまりにも情報が多すぎて、その情報を処理することに苦痛を感じたり、フェイクニュースによって、誤った意思決定を行ったりするケースも見受けられます。

また、自己承認欲求にあふれたSNS上の投稿は、自信を失わせる要因にもなるのです。人は誰でも「自分のことを話したい」という欲求をもっています。この欲求は自己承認欲求の1つと考えることができます。自己承認欲求とは、周囲から認めたもらいたい、自分を価値ある存在として認めたもらいたいという願望です。

SNS上の投稿の中には、自己承認欲求から、旅行にいったこと。豪華な食事をしたことといった投稿があふれています。多くの場合、このような投稿には共感するのでしょう。しかし、そのような投稿に対して、他者と自分を比べてしまうことがあります。投稿された幸せに満ちた大量の動画や写真に対して、妬みや嫉妬を感じるようになり、それが喪失感や孤独感に繋がることもあるのです。

学生の時期は最も多感なときです。感受性が鋭く、傷つきやすかったり、感情が不安定になりやすい時期といわれています。そのような多感な時期に、SNSに投稿される大量の写真や書き込みなどによって、他者と自分を比べ、喪失感や孤独感を感じてしまう人も多くいるのではないでしょうか?

そのようなことを考えると、オーストラリアのように16歳未満の子どものSNS利用を禁止する法律も必要なのではと思ってしまいます。

こどもの自殺対策緊急プランは、小中学生に1人1台行き渡ったタブレット端末の活用等を利用して、自殺リスクの把握や適切な支援を行うというものでした。しかし、1人1台タブレット端末を所有しているということは、ネットいじめの危険性も高まるということになります。このネットいじめが自殺に繋がる場合もあるのです。

ネットいじめを防ぐためにも、SNSなどを適切に使いこなすネットリテラシー教育の充実が最も必要なことではないでしょうか。