11月は過労死等防止啓発月間です。

厚生労働省発表

過労死等とは

過労死等とは、仕事による過労・ストレスが原因の1つとなって、脳・心臓疾患、呼吸器疾患、精神疾患等を発病し、死亡に至ることです。

仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は、2023年の労働安全衛生調査によれば、82.7%となっており、非常に高い数値を示しています。また、仕事上の強いストレスが原因でうつ病などの精神障害になり、労災と認められた人は2023年度は883人となっており、過去最高となっています。

長時間労働

労働基準法が定める労働時間は、休憩時間を除き、週40時間及び1日8時間とされています。これを法定労働時間といいます。しかし、業務の都合等により、法定労働時間を超えて労働を行うことが必要な場合もあります。そこで、労働基準法は、災害等による臨時の必要がある場合と労使協定が締結され、それが労働基準監督署長に届け出された場合にのみ、時間外労働や休日労働を認めています。

労使協定による時間外労働は、労働基準法第36条に規定されていることから、36協定とも呼ばれます。なお、労使協定とは、使用者と事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、ない場合は、過半数を代表する者との間で締結された取り決めのことです。この場合でも限度時間が定められており、1か月について45時間以内1年について360時間以内とされています。

長時間労働は、労働者の健康障害を引き起こすことがあります。厚生労働省によれば、1ヶ月の時間外労働、休日労働時間が45時間以内であれば健康リスクは低く、1ヶ月で100時間を超えること、または2~6ヶ月の平均で月80時間を超える過重労働になると、健康障害のリスクが非常に高くなると報告しています。

そのため、行政指針として、事業者に対して、過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として事業者が講ずべき措置を定めた、過重労働による健康障害防止のための総合対策が出されています。総合対策では、過重労働のための事業者が講ずべき措置として、下記の4つの内容を挙げています。

  • 時間外・休日労働時間等の削減
  • 年次有給休暇の取得促進
  • 労働時間等の設定の改善
  • 労働者の健康管理に係る措置の徹底

労働時間については、2028年までに週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にする。という目標を掲げています。

勤務間インターバル制度

長時間労働を削減するためには、労働時間等設定改善法に規定された勤務間インターバル制度の導入等の取組を行うことが効果的とされています。勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間以上の休息時間を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。

勤務間インターバル制度については、労働時間等設定改善法により、勤務間インターバルの確保の努力義務が定められています。

勤務間インターバル制度については、2028年までに労働者数30人以上の企業のうち、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とすること、また、労働者数30人以上の企業のうち、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上とする目標を掲げています。

心の健康を保つために取り組むべきこと

使用者と労働者の労働契約においては、労働契約法により、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとすると定められています。

また、労働安全衛生法では、事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。

そのため、事業者は、労働者の心の健康を保つために、ワークライフバランスのとれた働き方ができる職場環境づくりを行う必要があります。

有休休暇については、労働基準法において使用者は、その雇い入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有休休暇を与えなければならないと定められています。

有休休暇については、抽象的に発生した年休権は、労働者が具体的な年休日を指定することによって時季指定権に代わることにより、働くことから解放する権利を必然的に得ることになります。使用者は、労働者の時季指定権に対して時季変更権を有します。しかし、使用者が時季変更権を行使できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合のみとされています。

年次有休休暇については、2028年までに年次有給休暇の取得率を70%以上とする目標を掲げています。

常時50人以上の労働者を使用する事業場の労働者に対しては、1年以内ごとに1回、定期にストレスチェックを実施しなければなりません。また、常時50人未満の労働者を使用うる事業場の労働者に対しては、実施するよう努めることとされています。

労働者はストレスチェックを積極的に活用することで、ストレスの状況に気づき、セルフケアに努めることが大切です。

メンタルヘルス対策については、2027年までにメンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を80%以上にすること及び労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を50%以上にする目標を掲げています。